研究概要 |
「企業会計体制」概念は,それを戦後日本の企業会計制度に対する内省の基軸に据えると共に,会計制度の国際的な比較座標軸として措定しうる可能性を模索する概念である。こうした「企業会計体制」概念は,戦間期から戦後の過程で他ならない日本人の手で構想されたものであった。こうした「企業会計体制」は,結局は実現しなかったものの,日本の<『企業会計基準法』→「会計基準委員会」→「企業会計ルール」の三重階層>とそれらに対して<社会・文化システムから与えられる正統性>の問題を含む「会計の組織論」を提起したものであった。こうした見解はこれまでの日本会計制度研究では明確に示されておらず、この点を明らかにすることによって日本の会計学研究の一層の展開に貢献することができると期待された。 平成23年度においては、研究代表者である千葉と分担者である野口の共通作業として、(1)商工省準則および(2)陸軍省経理統制をめぐる企業会計体制について析出した特徴に関し、時系列・クロスセクション別のデータベースを作成することを予定し、とくに千葉が企業会計体制の基盤を形成する基本法の視点から各企業会計体制の特徴に関し必要な分析を行うとともに、野口が企業会計体制の中核部分を形成する会計基準作成の直接の担い手の視点から各企業会計体制の特徴に関し必要な分析を行う予定であったが、研究代表者である千葉の急逝により、上記研究作業の続行が不可能となった。
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