本研究は、「学校教育と社会教育の協働」を効果的に遂行するために、改正社会教育法下における社会教育主事の役割および期待される教育活動内容等を調査により明らかにしつつ、学校教育と社会教育の協働に関する社会教育主事の意識を多方面から分析することを目的としている。まず、社会教育主事の役割に関し先行研究を踏まえ理論的考察を試みた。社会教育主事は、都道府県および市町村の教育委員会に置かれる専門的職員で、社会教育をおこなう者に対する専門的技術的な助言・指導に当たる役割を持っている。しかし改正社会教育法により上記の社会教育主事の役割と位置づけに変化が見られた。換言するなら、学校教育に積極的にかかわることのできる社会教育主事である。 それでは社会教育主事が、改正社会教育法に見られる社会教育主事の役割や位置づけの変化をどのように考えているのであろうか。まず大分県内の教育委員会に勤務する社会教育主事10名を対象に聞き取り調査を試みた。その結果、多くの社会教育主事は改正社会教育法の意図は十分理解しつつも、社会教育主事が学校教育に積極的にかかわることができにくいという意識を持っていることが明らかになった。その理由の一部として学校の閉鎖性、つまり教職員の自己完結型(学校教育完結型)教育観、社会教育に対する理解不足が指摘できる。また学校教育に積極的にかかわっていこうとする社会教育主事の姿勢の欠如も窺えた。このような実態から、「学校教育と社会教育の協働」という観点から社会教育主事がその役割を十分遂行することができるためには、まず学校教育の閉鎖性の打破と同時に社会教育主事自身の意識改革が求められる。そこで学校教育と社会教育の協働を推進するための「協働」システムの構築を通して社会教育主事を活用していくことが重要になるといえよう。
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