研究課題
基盤研究(C)
乱獲などにより水産資源が年々減少している今日、"つくる"漁業の海洋牧場はますます重要となってきている。しかし、海洋牧場の資源量を計測しその効果を評価することは容易ではなく、確立した手法が無いのが実状である。本研究では、濁水中でも高画質で撮影できる音響ビデオカメラを用い、取得画像から魚を分離・抽出し魚の尾数・体長を計測し、三次元空間上魚の分布を求め、海洋牧場の資源量を定量的に計測する手法を開発することを目的とした。具体的には二つの手法、定点計測手法と走航計測手法に分けて開発を進めていく予定であった。定点計測ではDIDSONを選定の場所に固定し撮影する。この場合の最適撮影手法、魚の定量計測手法を確立する。また、走航計測では海洋牧場をカバーするような測線を設計し、船を走航しながら魚を観測し、最適撮影手法、船のモーション補正手法、魚の定量計測手法を確立する。これまで水産資源量の定量評価は、主に計量魚群探知機を用い、魚から帰ってくるエコー、体積散乱強度を測定し積分する、いわゆるエコー積分方式で行われている。しかし、この手法の推定精度は、魚種と一尾当たりの平均的な音響反射強度(平均ターゲットストレングス)に大きく左右される。本研究で提案する手法は映像から一匹ずつ魚を検出しその尾数と体長を計測するので、発想自体が異なる。従来の定量推定手法と比べ、推定の精度は高くなるだけでなく、形状に特徴がある魚種であれば、魚種を識別することも可能となる。また、魚の時間・空間分布を計算できるので目標魚種の最適漁獲サイズや漁獲許容量を決める上でも重要な根拠となる。本研究で開発する手法は、今後の漁場造成事業、漁場整備事業に大いに役立つものと期待でき、持続できる漁業に貢献できる。これまで、北海道のサケ資源を対象として、広範な河川を遡上するサケの遡上を計測する手法の検討、河川に入る前の沿岸域でのサケの総量を計測する検討を実施した。音響ビデオカメラでは10数mまでしか計測を行っていないが、無人ボートを使った広範囲をカバーする計測法を検討し計測システムの設計まで実施した。遡上前のサケは浮き袋が退化して殆ど消滅しているため、遡上前の沿岸域にどの程度の量のサケが集まっているか反射エコーを発生する浮き袋が無いため魚探で計る事が出来なかった。しかし、DIDSONは1.8MHzの高周波のため、姿形も観測する事が可能であり、これを使って小型船で計測する調査手法を設計検討した。一身上の都合により平成23年8月31日で現職を辞職することになり、残念ながら今年度の目標まで実施することはできなくなったが、実計測試験は研究者仲間が引き継いで実施する予定である。