研究課題/領域番号 |
23590988
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
植村 正人 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90151836)
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研究分担者 |
松本 雅則 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (60316081)
藤村 吉博 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80118033)
福井 博 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80145838)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2013
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研究課題ステータス |
中途終了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2013年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2012年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2011年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ADAMTS13 / 微小循環障害 / 肝星細胞 / 多臓器不全 / 肝硬変 / 急性肝不全 / アルコール性肝炎 / サイトカイン |
研究概要 |
ADAMTS13活性が著減すると、血小板と最も反応性に富む超高分子量VWFマルチマーが増加し、諸臓器の微小循環障害が惹起される。本研究ではADAMTS13を軸に、ADAMTS13活性の低下とVWF依存性血小板凝集、肝微小循環障害から多臓器不全(MOF)という観点から重症肝障害の病態を捉え、新規治療の開発を目指す。 研究代表者は、ADAMTS13活性の著減とVWF抗原の不均衡が、肝硬変, 重症アルコール性肝炎、劇症肝炎の進展・MOF発症に関与する可能性を指摘してきた。進行した肝硬変ではTTP類似病態、"subclinical TTP"という概念を提唱し、本酵素活性低下がMELD scoreに匹敵する肝硬変の予後予測因子となり、ADAMTS13を含有する新鮮凍血血漿の予防投与が肝硬変の予後改善に繋がる可能性を指摘した。また、健常人へのアルコール負荷後の血漿ADAMTS13活性は、ALDH2遺伝子正常ホモ接合体に比し、ヘテロ接合体においてより高度に低下することを認め、アルコール性肝炎の進展・MOF発症におけるADAMTS13の意義を概説した。さらに、ADAMTS13活性とVWF抗原の不均衡は、胆道感染症、特に閉塞性化膿性胆管炎、門脈圧亢進症においても観察され、血小板過凝集状態が高度の炎症ならびに門脈圧亢進症の病態形成に密に関与する可能性を指摘し、論文作成中である。 実験的には, 急性肝不全モデルを作成し、肝組織内ADAMTS13-mRNA, VWF-mRNAを検討した結果、肝内ADAMTS13の産生は亢進するものの、過剰なVWF産生を切断するために本酵素は消費され、結果として肝内ADAMTS13産生不全の状態に陥っている可能性が示唆された。現在、急性肝不全末期のみならず早期の肝内ADAMTS13の蛋白、m-RNAの分布・表出様式をVWF抗原との関連の基に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点における各年度の研究計画の進展と多少異なる点はあるが、臨床面では、(1)肝硬変におけるADAMTS13活性の低下がMELD scoreに匹敵する肝硬変予後予測因子となること(Hepatol Res, 2012)、(2) ADAMTS13を含有する新鮮凍血血漿の予防投与が肝硬変の予後改善に繋がる可能性があること(Int J Hematol, 2011)、(3) 健常人へのアルコール負荷後の血漿ADAMTS13活性の変動はALDH2遺伝子型により差異があり、アルコール性肝炎の進展・MOF発症におけるADAMTS13の意義をreviewし得たこと(Trends in alcoholic liver disease, 2011)は評価できると思われる。さらに、ADAMTS13活性とVWF抗原の不均衡は、胆道感染症ではエンドトキシンならびにサイトカイン血症等の高度な炎症反応と密に関連し、血小板過凝集、DICの誘因になることを指摘し得た。門脈圧亢進症では、食道静脈瘤出現早期からADAMTS13酵素・基質の不均衡により血小板過凝集状態にあること、食道静脈瘤硬化療法(EIS)後のVWF抗原の推移は一様ではなく、EIS後の血小板過凝集状態を是正する生体の恒常性維持機構が存在する可能性が示唆され、今後さらに発展性を有する結果が得られたものと考える。 実験的には, 急性肝不全モデルを作成し、血漿ADAMTS13活性は, 血漿VWF抗原と正の相関関係にあり、黄疸・腎機能障害、血小板減少が高度になるに従い低下すること、さらに肝内ADAMTS13の産生は亢進するものの、過剰なVWF産生を切断するために本酵素は消費され、結果として肝内ADAMTS13産生不全の状態に陥っている可能性が示唆された点は、急性肝不全におけるADAMTS13活性とVWF抗原の不均衡を証明し得た新知見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
臨床面では、胆道感染症ではADAMTS13活性とVWF抗原の不均衡が、高度な炎症反応から血小板過凝集・DICの誘因になることをVWFマルチマー解析を施行して確認する。門脈圧亢進症では、ADAMTS13酵素・基質の不均衡による血小板過凝集状態が門脈血栓形成と関連するか否か、食道静脈瘤硬化療法後の血小板過凝集状態を是正する生体の恒常性維持機構の存在とその破綻が病態に及ぼす影響を明らかにすべく症例を積み重ねて検討する。また、健常人へのアルコール負荷後の血漿ADAMTS13活性の変動はALDH2遺伝子型により差異があることを明らかにしたが、実際アルコール負荷後のVWFマルチマーパターンがALDH2遺伝子型により差異があるかを確認する。 さらに、生検肝組織を用いて血漿ADANTS13染色、VWF染色、α-SMA染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡によりその分布様式を、血漿ADAMTS13活性、VWF抗原ならびに線維化進展の程度と対比すると共に、肝組織内ADAMTS13のin situ hybridization、ADAMTS13-mRNA, VWF-mRNA等の表出動態を交えて検討する。 実験的には, 急性肝不全モデルでは、肝不全末期のみならず、さらに早期(GAL+LPS投与3~9時間)の肝内ADAMTS13蛋白、m-RNAの分布・表出動態をVWF抗原との関連の基に検討し、末期における肝内ADAMTS13産生不全状態と如何に連動するかを検討し、類洞内微小循環障害、血小板血栓形成、肝不全から多臓器不全への進展過程を構築する。また、ラット初代培養肝星細胞を分離し、各種サイトカイン、エンドトキシシン, エタノール等の薬剤を添加し、肝星細胞と培養液中のADAMTS13活性、蛋白ならびにmRNAの動態を観察し、これら薬剤と肝星細胞のADAMTS13産生・分泌動態を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必要な設備・備品はこれまでの基盤研究補助費で準備できており、直接経費である消耗品がほとんどを占める。なお、研究をより円滑に推進するに当たり、実験助手を雇用する予定であり、人件費・謝金をそれに当てる。 肝疾患およびラット血漿ADAMTS13活性、ADAMS13抗原、インヒビター、VWF抗原量、VWFマルチマー解析を検討するに当たり、ADAMTS13活性は本学輸血部で開発した高感度ELISA法で測定する(1キット約9万円)。VWF抗原量は、当研究室でcoatingしたELISAで測定するが、VWF抗原量は変動が大きく、適切な希釈率を設定する必要がある為、多数のプレートを要する。Unusually-large VWF multimerを検討するverticalgel VWF multimer法は、技術的に難しく、何度か再検査が必要であり、用いるアガロースは特殊で高価な検査(1シリーズで20検体:3万円)であるが病態を解明する上で必要不可欠である。 一方、急性肝不全ラットモデルを確立するために、条件の設定、再現性を確認する必要があり、十分量の薬品と匹数を要する。ADAMTS13、VWFの存在様式、血小板血栓の有無等の病理学的検索を行うに当たり、組織標本作成、至適条件設定のために経費を要する。また、in situ hybridizationを施行するためのprobe作成、DNA抽出用試薬等、相当の経費を要する。ラット初代肝星細胞を分離培養を行うに当たり、実験器具ならびに培養器具・培養液などは条件の設定、再現性の確認のため十分量が必要である。各種サイトカイン、エンドトキシシン, エタノール等の添加薬剤ならびにADAMTS13活性、蛋白、mRNAの動態を検討する為の経費も要する。 また、文献の集積、外国語論文校正、論文印刷費等は研究成果を広く世界に発信するために必要である。
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