研究課題
基盤研究(C)
C型肝炎ウイルス(HCV)に対する現行治療の成績は決して満足できるものではない。また、ウイルス非排除例における肝病態の進展や肝発癌の問題も深刻である。したがって、新規治療法の開発やHCVによる病原性発現の分子機序解明とその克服は重要な課題である。申請者は、HCV生活環及び病原性発現に重要な役割を有するリン酸化蛋白質であるNS5Aとそのリン酸化を制御するプロテインキナーゼ(PK)の相互作用に着目し、NS5A結合PKの同定を網羅的に行なった。本研究では、さらに、NS5A結合PKの中からHCV生活環に影響を与えるPKを取得すること、また、NS5Aとの相互作用により機能変化が起こるPKを同定し、そのシグナル伝達経路や下流分子機能への影響を解析することを目的とした。404種類のヒトPKの中から、ハイスループットな蛋白質間相互作用の解析が可能であるAlphaScreen法を用いてNS5Aと強く相互作用するPKを89種類同定した。この中には、細胞死、癌化、細胞周期制御に関与するPim、Aurora、Lynや解糖系の制御に関わるPDHK2、オートファジー誘導に役割を有するULKなどが含まれていた。さらに、Pimによりリン酸化されるプロアポトーシス蛋白質であるBadのリン酸化がNS5A発現細胞において有意に抑制されることを見出した。また、HCV感染増殖細胞系を用いたPKのノックダウン解析により、HCV生活環への関与が強く示唆される新規PKを5種類同定した。NS5Aとの相互作用を介してHCV生活環に関与するPKの同定は、ウイルスの生活環をより理解する上で重要であることに加え、宿主因子を標的とした新たな治療法の開発へもつながる可能性を有している。また、NS5Aとの相互作用により機能変化がおこるPKの同定とそのシグナル伝達経路の解析は、HCVによる病原性発現の分子機序解明に道を拓く可能性がある。
すべて 2011
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J Biol Chem
巻: 286 ページ: 37264-37273
Biochem Biophys Res Commun
巻: VOL.410 ページ: 404-409