研究概要 |
ある対象物に対して記憶している色が,同じ対象物であるにもかかわらず,今見ている色とは異なっているという感覚がある.一般に,このような色の感覚のシフトは,我々が色をカテゴリ化することに起因するためと考えられているため,そのカテゴリ化の符号化過程において記憶がどのように影響するかを心理物理学的,脳機能画像解析的に調べた.色カテゴリ化課題の心理物理学実験の結果は,色覚正常者の場合,刺激条件に関わらず,各色カテゴリ領域が排他的に形成され,その境界が明瞭であるのに対して,2色覚者の色カテゴリ領域は排他性が低く,境界も明瞭ではなかった.一方,NIRSを用いた脳機能画像解析の結果は,両被験者群とも,どの条件下においても有意な皮質活動は得られなかった.このことは,色の見えという感覚質が符号化される前に内的に演算されているとしても,その表象結果として表現するときには符号化されていることを示唆している可能性がある.
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