研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究はテラヘルツ分光法を用いた繊維の識別方法を開発し、新規かつ信頼性の高い品質表示の鑑別法を確立することを目的としている。本研究で着目したのは、これら繊維は分子量の大きな有機物で構成されており、高分子材料の骨格振動やねじれ振動に加え、水素結合、分子間相互作用や結晶の格子振動などの低エネルギーの振動を用い繊維の種類を識別する方法である。本研究で用いたテラヘルツ分光器は、GaP 結晶中での近赤外光の差周波発生によるものであり、発生するテラヘルツ波は広帯域性(0.5~6.2THz)と高出力性を合わせ持つ。各種繊維試料は、凍結粉砕により微粉末化した後にポリエチレン粉末と混合しペレットを形成し測定を行うことによって定量的分析を実現した。特に、本年度はセルロース由来の繊維識別に着目した。綿は結晶化したセルロースをその主成分としており、結晶化したセルロースに起因した吸収ピーク(2.1、3.2、4.3 および5.2 THz)が観察された。これに対し、セルロースを化学的に分解せずに精製するリヨセルプロセスによって形成されるテンセル(商標)では、2.2、3.2、4.5 および5.5 THz に比較的ブロードな吸収ピークが観測された。また、化学的反応を伴って形成される銅アンモニア法レーヨンであるキュプラ(商標)やブナパルプからつくられるポリノジックであるモダール(商標)では4-6 THz の広範囲においてなだらかな吸収が観測された。本研究の成果によって、同様の成分からなる繊維種であっても、その分子間結合状態や結晶構造の違いを高感度に検出でき、これが繊維種識別に有効な方法であることが示された。
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http://www.ee.akita-u.ac.jp/DEEE/