研究概要 |
狭い範囲に標高差3000mもの多様な環境がある日本中部の富山県において,10カ所の調査地点(水圏環境:ダム湖8カ所,溜池2カ所)から各水圏のTop Predatorであるオオクチバス(9~10個体)を採集し,脱脂筋肉のδ15Nとδ13Cを分析・比較した。δ15Nとδ13Cは各調査地点内においては大きな変異を示さない一方で,それぞれの調査地点では異なる値を示した。ダム湖は集水域の標高と湖水の回転率により二つのグループに分けられ,食物連鎖の栄養源が異なることも示唆された。オオクチバスのδ13C・δ15Nは,生息する水圏環境を反映でき,淡水域の環境評価や食物連鎖のプロキスとして有効であり,同一種を用いた世界規模での水圏環境の比較やモニタリングが可能である。さらに,オオクチバスの脱脂筋肉と鱗のδ13C・δ15Nには高い相関があることから,保存や処理の簡便な鱗が活用できる。
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