研究概要 |
本研究では,月経周期に伴うホルモンバランスの変化が注意制御機能に及ぼす影響を検討した。そのため,標的以外の刺激(妨害刺激)に注意が逸脱することによって,標的の同定成績が低下する注意の捕捉現象を利用した。女性被験者は月経周期のMP期,FP期,LP期に実験を実施し,実験前に唾液を採取することによって,エストラジオールとプロゲステロンの測定を行った。時間的及び空間的探索課題を用いて実験を行ったところ,両課題において注意の捕捉が認められた。時間的探索課題を用いた場合には,男性に比べて女性の方が注意の捕捉の生起量が大きかった。これは,時間的な探索課題を遂行中の女性は,男性に比べて課題に関係のない目立つ刺激を無視できず,注意を向けてしまうことを示している。しかしながら,両課題とも注意の捕捉の生起量は月経周期のいずれの段階も一定だった。これらの結果から,時間的探索課題で認められた注意の捕捉の男女差は,性に特有なホルモンに起因するのではなく,身体的な差に起因することが示唆された。
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