研究課題
挑戦的萌芽研究
我々は、3T3-L1脂肪細胞をGHで24時間前処理した後、インスリンで刺激すると、GLUT4の細胞膜移行に影響を与えず、糖取り込みが抑制されることを示してきた。本研究では、糖膜透過能を制御するAkt基質およびGLUT4の翻訳後修飾を同定するとともに、GLUT4の糖膜透過能を制御する低分子化合物や抗体をスクリーニング、これらの物質の処理が一部のインスリン抵抗性を解除することを細胞レベルで示すことを目的としている。まず、GH長時間処理によって、インスリン依存的なリン酸化が減少するAkt基質を探索し、AS47タンパク質の同定に成功した。またこのタンパク質をsiRNAによって発現抑制したところ、GLUT4の細胞膜移行に影響を与えずに糖取り込み量を抑制していた。このことから、AS47がGLUT4の糖膜透過能に重要な役割を果たしていることがわかった。次にGLUT4分子内から翻訳後修飾されうる予想モチーフを網羅的に検索し、その部位に変異を導入したGLUT4変異体を作製した。この変異体をGLUT4が発現していない293細胞に導入し、糖取り込み量を測定した。その結果、リン酸化モチーフに変異を導入したGLUT4変異体(GLUT4-P)が、野生型GLUT4を発現させた場合に比べ糖取り込み能が有意に上昇していた。また、GLUT4の細胞外ドメインを認識する抗体の単離は既に成功しており、現在糖取り込み能を亢進する抗体の同定を進めている。このように、GLUT4の糖膜透過能を制御するAkt基質とGLUT4の翻訳後修飾を同定することができた。このAkt基質やGLUT4の翻訳後修飾を制御する低分子化合物も、GLUT4に対する抗体と同様にインスリン抵抗性解除薬の有力な候補となりうる。
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