研究概要 |
本研究では,多彩な機能をもつヘパリンを材料としてナノドラッグキャリアとして創製し,関節炎リウマチに対する治療を試みた。ネイティブのヘパリンあるいは一部の糖を開裂させたヘパリンにスフィンゴシンを結合させたヘパリン誘導体を合成した。これは水中で粒子径120-200nm,ゼータ電位-50~-60mV の自己組織化ナノ粒子を形成した。マウス腹腔マクロファージを用いた in vitro 実験の結果, スフィンゴシン/ヘパリン誘導体はそれ自体でもリポポリサッカライド刺激による炎症性サイトカインの産生を有意に抑制することが明らかとなった。一方,poly I:poly C 刺激による TNF-αの産生に対しては効果を示さないことから,スフィンゴシン/ヘパリン誘導体は TLR4/NF-κB 経路に対して選択的に作用するものと推察された。II型コラーゲン誘発関節炎モデルマウスを用いた治療実験においても,スフィンゴシン/ヘパリン誘導体,とりわけ一部の糖を開裂させたヘパリンの誘導体は顕著な抗炎症効果を示すことが明らかとなった。
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