研究課題
若手研究(A)
本年度は、実験をおこないつつ、地球中心核の熱力学データベースの構築をおこなった。実験は、内部抵抗加熱式DACをSPring-8(兵庫)の放射光X線と組み合わせて、鉄合金、および純鉄について高温高圧その場観察実験を行った。熱力学計算では、地球中心核物質の候補として重要な鉄―酸素系の計算を行い、共融点組成を内核―外核組成まで求めた。既存の実験データおよび本研究で得られた実験データをもとに鉄および酸化鉄の両端成分について熱力学データベースを構築した。問題は中間組成をもつ溶液の混合特性である。低圧ではこの系の溶液は2相分離を示すほど強い非理想性を持つことが知られている。しかし、本研究で理想溶液を仮定して求めた共融点温度は、外核の圧力範囲では、既報のレーザー加熱式DACによる高圧実験の結果と矛盾しないことがわかった。したがって鉄―酸素系における溶液特性は理想的であると仮定することができる。完成した熱力学データベースから共融点組成を内核―外核境界まで求めた結果、100万気圧以上ではおよそ9.5 wt%で一定であった。また、自由エネルギーから液体合金のP波速度を求めた。その結果、外核の温度圧力条件では、液体純鉄に酸素を加えると速度が遅くなることが分かった。地震学的観測による外核の速度は純鉄よりも速いため、本研究結果から酸素が核の主たる軽元素ではないことが示唆される。一方で、外核最上部に観察される低速度層は酸素が原因であると考えられる。本研究結果をもとに今後マントルと外核の相互作用の理解が進むことが期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Earth and Planetary Science Letters
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巻: (印刷中)