研究概要 |
人間は日常生活の中で様々な推論を行うが,そこでは確実性が保証された演繹的推論ばかりではなく,ときには間違いも含まれる不確実な推論も行われており,C.S.Peirce によって研究が開始されたアブダクションもそういった不確実な推論の一種である.研究代表者はアブダクションの概念を出発点として,本研究を通して次のような成果を得た (1)演繹・帰納・アブダクションという推論の3形式に対応する構造が,線形システムとそれに対する一般化されたパラメータ推定が成す Adjoint の中に存在することを明らかにした (2)アブダクティブパラメータ推定(APE)の提案および APE に基づく擬似株価予測実験の研究を行った.APE とはパラメータ推定とある種の不確実性を含む推論であるアブダクションとを結びつけた概念である.我々は APE を AR 過程に適用することにより推定パラメータの分布として Gauss 分布,Cauchy 分布,およびその中間的分布が得られることの数値的および解析的証明を行った.また,株価の暴騰・暴落は上記のメカニズムが関わる経済現象であるとの仮説を立て,Pawelzik らのターゲット追尾実験からヒントを得た擬似株価予測実験を142 人の被験者に対して行い,株価変動分布の特徴である Gauss 分布と Cauchy 分布の中間的性質を持つ分布を得た.これらの結果は,学術雑誌論文 3 件(うち国際学会 Proceeding 1 件),学会発表 12 件によって公表した.本研究の一部は第12回計測自動制御学会 SI 部門講演会において優秀講演賞を受賞した.さらに本研究の成果に基づき,研究代表者は平成 25 年度東北大学電気通信研究所共同プロジェクト研究の参加が決定するなど評価を受けた.
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