研究課題
若手研究(B)
ミトコンドリアは細胞内小器官の一つであり、生命活動に必要なエネルギーを生産している。近年の生細胞観察技術の発展により、ミトコンドリアは環境の変化に応じて融合と分裂を繰り返し、ダイナミックに形態を変化させていることが明らかになり、その生理的意義に注目が集まっている。そこで本研究では、運動神経による骨格筋収縮の制御に必須のシナプス構造である神経筋接合部の形成における筋ミトコンドリア形態変化の機能解析を目的とした。本年度はまず、筋ミトコンドリアの形態異常による神経筋接合部の形成への影響について検討するためのツールとして、筋組織特異的にミトコンドリア分裂因子野生型(DRP1 WT)あるいは分裂阻害型変異体(DRP1 K38A)を過剰発現する2種類のトランスジェニック(Tg)マウスを作製した。それぞれ2ラインのトランスジーン陽性マウスを取得したが、筋組織を用いたウェスクンブロッティングによりトランスジーンの筋特異的な過剰発現が確認されたのは、それぞれ1ラインのみであった。得られた各Tgマウス筋組織を用い、電子顕微鏡下でミトコンドリアの形態を観察したところ、DRP1 WT Tgマウス及びDRP1 K38A Tgマウスの筋組織においてそれぞれミトコンドリアの分裂促進及び分裂阻害が認められた。一方で、神経筋接合部の形成は、Tgマウス(DRP1 WT Tgマウス及びDRP1 K38A Tgマウス)と野生型マウス間で顕著な差は認められないことが共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析より明らかになった。以上の結果は、筋ミトコンドリア形態の異常は、神経筋接合部の形成に影響を与えないことを示している。