研究概要 |
脳卒中高次脳機能障害患者の日常生活の困難さを観察場面から評価できるよう評価項目の抽出を実施した.対象は,経験年数 3 年以上の作業療法士(OTR)30 名と 180 名の高次脳機能障害患者であった.OTR が高次脳機能障害患者の日常生活活動の困難さを functional independence measure(FIM)の分類に基づいて列挙した 245 項目をクラスタ分析にて 6 グループ 66 項目に絞り込み,次に 180 名の患者に対して 5 段階に評価した.結果,5 因子 30 項目が抽出された.第1 因子が状況判断 8 項目と第2 因子が行動の調節7項目,第3 因子が記憶 7 項目,第4 因子が心の理論 5 項目,第5 因子が保続 3 項目であった.行動評価から抽出された 5 因子と FIM 間には相関を認めた(r=0.4~0.7,p<0.01).FIM の自立群と非自立群間にはすべての因子得点に差が見られた(p<0.01).重回帰分析では, FIM 総合得点と認知得点には第1 因子が影響力を持っていた(p<0.01).OTR が高次脳機能障害患者の観察場面を評価することは,彼らの日常生活活動の困難さの実態を的確に捉え,効果的な介入を実践することに有用であることが示唆された.
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