研究課題
若手研究(B)
本研究ではHGF発現に関与するプロモーター領域のA繰り返し配列数(polyA)とHGF発現の関連を検討した。固形がん細胞73細胞株を対象にpolyA領域の変異を検討したところ、Short polyA(<25bp)の細胞株が7株、正常型のpolyAの細胞株は66株であった。73細胞株のHGFのmRNA発現をrealtime RT-PCRで解析し、HGFのmRNA高値の細胞株では29%(2株/7株)がShortpolyAで、HGFのmRNA低値株では3%(2株/66株)であった。予想通りHGFのmRNA高値株は、ShortpolyA型である頻度が有意に高いことが示された(p=0.04)。次にHGFタンパクの分泌量をELISAで検討したところ、Short polyAであるH69細胞とIM95細胞が、他株と比べて1000倍以上HGFタンパクを分泌することを見出した。一方、Short polyAでもHGF低値の細胞株が存在したことから、9個のHGFプロモーターのSNPを検討した。HGF高値のIM95細胞は、rs3735520がC/Aアレルであったのに対して、他の18株はCアレルであった。rs72525097についてもShort polyA株で頻度が高い傾向を認めた。HGFプロモーターの解析方法としては、自動ゲル解析装置の簡便スクリーニング系およびシークエンスの検証方法を確立した。臨床検体サンプルについては、肺癌30例に対して検討した。自動ゲル解析装置の測定では、そのうち4例にShort polyA型異常が認められた。TAクローニングし、各10クローンのシークエンスを行ったところ、1例はpolyAが14個と著明な短縮を認めた。結論としてHGFpoly A領域の変異は、がん細胞株および臨床検体でHGF発現量を制御する可能性が示唆された。
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