17世紀のイギリス人作家トマス・トラハーン(Thomas Traherne, 1637-74)の文学を、初期近代手稿文化の歴史的枠組みの中に位置づけて捉え直すことを目的としている。トラハーンのテクストの生成にはしばしば(複数の)他者による「協力的/編集的介入」が認められるという事実に着目することによって、トラハーンの手稿テクストをそれ独自の性質と存在様式を備えた物質的人工物として精査しながら、社会-文学的制度としての「手稿テクスト共同体」(scribal community)における文学テクストの生産・消費過程に関する諸相の分析を行った。
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