研究概要 |
本研究では、日本語を英語と区別する重要な性質であると考えられている「項削除」(Argument Ellipsis)について、それが満たすべき制約の獲得過程を、幼児を対象とした心理実験を実施することにより調査した。具体的には、(A) wh句は削除することができない (B) 付加詞は削除することができないという2つの制約を取り上げ、日本語を母語とする幼児が、観察しうる最初期から、それらの制約に従うことを実証的に示した。本研究の成果は、「生得的な言語機能には、『項削除』の言語間変異を司る『パラメータ』が存在し、この『パラメータ』は『項削除』の有無と(獲得中の幼児から見て)より顕著な性質(『かきまぜ』(scrambling)や『一致』(agreement))の有無とを結び付けている」という理論的提案(Oku 1998, Saito 2007, Takahashi 2008 など)に対し、言語獲得からの支持を与えるものである。
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