満州事変当時の立作太郎の国際法論、特に「満洲国」承認問題に対する学問的応答のあり方の分析を行った。立は当時の日本を代表する国際法学者であり、実質的に見て外務省国際法顧問の地位にあったとされる人物である。本研究では、牧野伸顕宛の私信など、従来利用されてこなかった史料を活用し、「満洲国」承認問題をめぐって公刊論文上で展開された立の言論と、一個の国際法学者としての立の純粋学問的な判断の間に、矛盾が見られることを明らかにした。また、日本政府の「満洲国」単独承認政策を法的に正当化する趣旨で書かれた公刊論文の内部に、その政策を間接的に批判し、別の政策を提案する狙いが込められた箇所が見られることも明らかにした。
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