研究概要 |
本研究は、米国カリフォルニア州を対象地域として、怠学、薬物、粗暴的逸脱行動、早期妊娠等のリスクを抱えた児童生徒へのオルタナティブ教育(alternativeeducation, educational alternatives)制度に焦点を当て、その実態を明らかにすることを試みたものである。文化的、社会的、宗教的多様性にかねてより直面し、その打開にもがいてきた米国では、多様な児童生徒に公平かつ公正に教育において成功する権利を保障する努力が継続されてきており、その政策の成否には賛否両論あるものの、制度としては児童生徒の多様性に対応することを企図した幾層ものセーフティネットが考案されるに至っている。すなわち、米国のオルタナティブ教育は、子どもと家庭の多様なニーズへの適合を求めてきたゆえに、学校教育を起点に多様な関係諸機関を巻き込む形で、「多層セーフティネット」を複雑に紡いでいる。本研究では、カリフォルニア州及び州内の郡・学区(ソノマ郡と郡内の学区)に分析対象を焦点化し、リスクを抱えた児童生徒へのオルタナティブ教育制度の構造を明らかにした。まず、公的機関の報告書等を文献調査し、教育的オルタナティブの制度的枠組みを学区及び郡レベルの二層構造として捉えた。次に、学区レベルの制度として「学内停学」、「インディペンデント・スタディ」、「コミュニティ・デイ・スクール」を、そして、郡レベルの制度として「コミュニティスクール」、「コートスクール」を明らかにした。これらの制度的研究を通して、カリフォルニア州のオルタナティブ教育制度の意義について、学校教育を起点としつつも様々な各種関係機関との連携を制度的に担保した「多機関的資源」として、多様な児童生徒のリスクとニーズへの適合が図られていることを明らかにした。しかし、一方で、オルタナティブ教育には、社会的な負のラベルがはられており、決定的な限界を有しているといえる。
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