配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2012年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2011年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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研究概要 |
本研究では,圧力下においてディラック電子系と通常の電子系の両方をあわせ持つ分子性導体体θ-(BEDT-TTF)_2I_3を対象として熱起電力の測定を行い,多バンド系でのディラック電子に焦点をあてた研究を行う.本研究には,まだ十分に確立していない圧力下熱輸送測定技術の開発を行うという意義もある.多バンド効果を理解するためには,まずディラック電子系のみを有するα-(BEDT-TTF)_2I_3の振る舞いを理解しておく必要がある.初年度の研究により,まず低周波ac法による常圧・圧力下での熱起電力測定系を立ち上げ,圧力下でのα型試料の熱起電力測定に成功した.とくに磁場下の測定では,ゼーベック効果を上回る強度のネルンスト効果が現れ,通常の金属とはまったく異なる振る舞いが観測された.このネルンスト信号は低温・磁場下で1mV/Kを超える非常に巨大な強度を示す.過去のデータと照らし合わせると巨大なシグナルは量子極限領域で観測されていることが分かり,これらはディラック電子系特有のランダウ準位の形成,とくにディラック点に形成されるN=0のランダウレベル(ゼロモード)に関連していると考えられる.このようにα型試料において予想をはるかに上回る興味深いデータが得られたため,当初の目標であったθ型に関する測定を保留し,最終年度もα型試料に対する測定を継続して,この現象の解明を進めた.その結果,本物質で観測されたネルンスト効果は電子とホールが共存するゼロモードの本質的な特異性を反映していることが明らかとなった.巨大なシグナル強度の原因としては,本物質におけるクリーンな電子系によるシャープなランダウ準位幅とスピン分離によるギャップの存在が深く関わっていることが示唆される.
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