研究概要 |
本研究では,基底状態の異なる籠目格子反強磁性体の混晶を系統的に作成することにより,基底状態とそのスピンダイナミクスの制御を試みた.混晶の基になる両端の物質は,それぞれ低温でスピンが秩序化するものと,非磁性なpinwheel VBS状態と呼ばれる基底状態を持つものである.混晶系の混合比を調整した試料について磁気測定を行ったところ,非磁性な基底状態から磁気的な状態への励起ギャップおよび,反強磁性転移温度が混合比により系統的に変化することを観測した.研究期間の初年度に作成した単結晶試料で,中性子非弾性散乱の測定を試みたが,相互作用のランダムネス効果が強く,十分な強度の磁気励起を観測することができなかった.この実験に関しては,研究期間の終了間際に良質な単結晶が得られたため,今後の発展に繋げることが出来ており,今後に低次元磁性体の研究に係数効率の綿で有利な中性子飛行時間分解法を用いた磁気励起の研究を進めていく予定である.
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