研究課題
若手研究(B)
平成26年度は、Jung and Arakawa (2008)に基づく、渦度を直接予報するタイプの渦解像モデル、「ベクトル渦度モデル」を用いて行った実験結果の解析を行った。昨年度に行った、サーマルのサイズ、成層の安定度を変化させた実験において、エントレインメントの量を計算した。サーマルのサイズが大きくなるほどエントレインメントの量が小さくなることを確認した。また、エントレインメントの量が成層の安定度の影響を受けることを確認した。研究期間全体を通じた研究の最大の成果としては、Jung and Arakawa (2008)に基づく「ベクトル渦度モデル」を開発したことが挙げられる。流体において渦度は非常に重要な量であり、これを精度良く直接予報する本モデルは、今後の様々なシミュレーション研究の基盤になりうる重要なものである。また、本モデルを用いて、サーマルのサイズ、成層の安定度を変化させた実験を複数行った。サーマルのサイズが大きくなるほどエントレインメントの量が小さくなること、エントレインメントの量が成層の安定度の影響を受けることを確認した。これらの結果の解釈は、今後の課題として残っている。研究代表者が平成26年度途中で海外の研究機関に雇用されることが決まったこと、また、ベクトル渦度モデルの開発に予想以上に時間を要したことから、本研究課題申請当初の研究実施計画で予定していた、エントレインメントの決定要因についての理論的な考察を完了するには至らなかったが、今後、これを研究して行くにあたっての基盤が整備された。エントレインメントの決定要因の研究は、積雲の理解とシミュレーションにおいて決定的な影響を持つ重要な課題である。今後の研究として、エントレインメントと渦度・エネルギーとの関係について理論的考察を加えていくことを計画している。