研究概要 |
本研究では,情報理論的に安全な秘密鍵共有における安全性の精密な評価を行うことを目的としている.研究開始時から若干の変更があり,最終年度は以下の項目について研究を行った. (1)盗聴通信路において,従来の研究では乱数を無制限に使用できるという仮定のもとで研究をおおなっていたが,実際の物理乱数生成器の生成速度は非常に遅いため,現実的ではなかった.そこで本研究では乱数の生成速度と盗聴通信路における通信速度のトレードオフを評価する問題を定式化し,最適なトレードオフとそれを達成する符号化法を解明する必要がある. (2)情報理論的に安全な秘密鍵共有において,秘匿増強と呼ばれる秘密鍵を抽出するプロセスは重要な役割を果たす.従来の安全性評価では,鍵の生成レートがある程度高い際に精密な評価が導出されていた.アプリケーションによっては鍵生成レートを低く設定することで,より高い安全性が要求されることもある.しかしながら,従来の研究では低いレートに設定した祭の精密な評価がなかった. 最終年度の研究では,(1)については,昨年度までに得られていた着想を発展させ,最も一般的な秘匿メッセージ付き放送型通信路において,最適なトレードオフを解明した.また,この成果をさらに発展させ,コグニティブ放送型通信路において,最適なトレードオフを解明した.(2)については,通信路符号化において通信レートが低い際に誤り確率の精密な評価を得るための手法であるエクスパージョンバウンドの考えを安全性の評価に導入し,秘匿増強のエクスパーゲーションバウンドを導出することに成功した.この成果によって,鍵生成レートが低い際にも,安全性の精密な評価が可能になった.
|