研究課題
若手研究(B)
日本脳炎ウイルス(以下JEV)は人や馬に感染し脳炎を、豚に感染し流死産を引き起こす。本研究ではJEVの感染から発症までのウイルス動態を臓器・細胞・分子レベルで具体化することを目的とした。JEVの増殖が認められないDaudi細胞にC型レクチンDC-SIGN,DC-SIGNR,LSECtin分子を発現させたところ、増殖が認められるようになった。ただしその効果は発現させる分子およびJEVを調製した細胞に依存した。JEVのE蛋白質の分子量は調製した細胞により異なっていたが、明確な糖鎖構造の差異は見いだせなかった。レクチンを介した感染は糖鎖構造を主とするMannanやGlcNAcβ1-2Manにより特異的に阻害された。これらから次のことが考えられる。JEVは蚊の吸血により皮内に侵入し樹状細胞などにDC-SIGN分子を介して感染する。増殖したウイルスは血流に乗り樹状細胞以外のDC-SIGNRやLSECtinを発現している肝類洞や胎盤の内皮細胞に感染し良く増殖する。感染した細胞で受ける糖鎖修飾が異なるため、次の標的も変わる。胎盤内皮細胞への感染は妊娠豚の流死産と関係するかも知れない。中枢神経系に良く感染する傾向を持つ日本脳炎ウイルスを産生する細胞種が体内にあるのかも知れない。
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