研究課題
若手研究(B)
植物の根は水分の多い方向に屈曲伸長する水分屈性能を有する。これは、植物が土中で水分を効率的に獲得するのに役立っていると考えられる。これまでに申請者らは、植物の水分屈性の分子機構の解明を目指して、モデル植物であるシロイヌナズナを研究材料に研究を行ってきており、水分屈性を欠損する変異体miz1 (mizu-kussei 1)を単離している。本研究では、MIZ1遺伝子がコードするタンパク質の機能解析を主な目的としている。MIZ1タンパク質は陸上植物のみに存在するタンパク質でその機能は未知である。MIZ1タンパク質は297アミノ酸残基からなりN末端側の非保存領域とC末端側の植物間で高度に保存された領域(MIZドメイン)を有する。予測アルゴリズムを用いてタンパク質の細胞内局在を予測したところ、MIZ1タンパク質はミトコンドリアや葉緑体などの二重膜系オルガネラに輸送されることが示唆された。そこで、MIZ1にGFPを付加した融合タンパク質を発現させるコンストラクトをmiz1変異体に遺伝子導入した形質転換体を作出した。形質転換体は、miz1変異を相補したことからこの融合タンパク質機能していることが示された。一方、予期しない結果としてmiz1変異を持つ変異体型の融合タンパク質は遺伝子発現が確認できたが、融合タンパク質を検出することができなかった。このことはmiz1変異体の原因は、MIZ1タンパク質を不安定化することでタンパク質が欠損するからだと考えられる。次いで、GFP蛍光を共焦点蛍光顕微鏡法を用いて、観察を行ったところ、MIZ1タンパク質が根端細胞および皮層の分裂域で発現していることがわかった。さらに、細胞分画を行ったところ、MIZ1タンパク質が可溶性の性質を示すだけでなく、小胞体膜に結合することもわかった。これらのことからMIZ1は根の水分屈性において小胞体で機能していることが示唆された。
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