研究概要 |
本研究プロジェクトでは、腸炎においてDNA損傷応答が組織傷害を感知するセンサーとして働き、免疫、炎症細胞の活性化制御に関与しているという仮説を検証することを目的として研究を行った。 前年度は、腸炎モデルにおいて局所でDNA切断を誘導するNOなどを産生するマクロファージやDNA切断によって局所でクラススイッチ組み換えを行っているB細胞や腸管に多数存在するIgA抗体産生細胞に着目し研究を行った。その結果、抗体産生細胞にMHC class IIやCD80,CD86などの補助分子の発現が発現し、抗原提示細胞の表現を示していることを発見した。また、腸管のIgA抗体産生細胞が、腸管における免疫制御受容体PD-1のリガンドであるPD-L1の主要な発現細胞であることを発見した。腸管のIgA抗体産生細胞は、通常の樹状細胞と比較して、活性化補助分子CD80,CD86の発現が低く、抑制性補助多子PD-L1の発現が高いことから、免疫反応の抑制や免疫寛容に関与する可能性が推測された。そこで、OVA特異的TCRトランスジェニックマウスのT細胞を用いて、in vitroで抗原提示細胞の抗原提示能を検討した。その結果、抗原提示細胞は、ナイーブT細胞に対する活性化能は低く、細胞増殖やIFN-・などの炎症性サイトカインの産生を誘導することは出来なかったが、経口免疫寛容を誘導すると考えられている腸管膜リンパ節樹状細胞と同様に、TGF-・依存的にFoxP陽性の制御性T細胞を誘導し、腸管恒常性維持に関与している可能性が示唆された。また、慢性腸炎によって腸管にIgG抗体産生細胞誘導されるモデル構築するために、慢性型DSS腸炎モデルを検討した。その結果、DSS腸炎を慢性化させることで、腸管に通常見られないIgG抗体産生細胞が見られ、特にTGF-・によって誘導されるIgG2b陽性細胞が誘導されることが分かった。これらの結果から、炎症時には異なるタイプの抗体産生細胞が関与していることが示唆され、今後、これらの細胞へのDNA修復応答の解析が必要である。
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