研究課題
若手研究(B)
近年、末梢動脈疾患は高齢化、生活習慣病の増加を背景に患者数が増加してきている。症状が重篤化した重症虚血肢では下肢切断に至る場合も多く、効果的治療法の開発が急務とされている。重症下肢虚血症例への細胞移植による血管新生療法が臨床応用されるようになったが、その効果は未だ十分とは言えない。機械的刺激の負荷が血管内皮細胞の機能調節に重要なシグナルとなっていることが近年解明されている。そこで、本研究では移植前の血管内皮前駆細胞(Circulatingangiogeniccells:CAC)へ低強度パルス型超音波による機械的刺激を負荷することにより、同細胞が有する血管新生能を増強させ得るかについて検討した。ヒト末梢血由来のCACを培養し、培養期間中に低強度パルス型超音波刺激を加えた。超音波刺激によりCACの産生細胞数、遊走機能が増強され、培養液中のアンジオポエチン2および一酸化窒素濃度の有意な増加がみられた。ウェスタンブロットによりCACのAktリン酸化とeNOS発現の増強を確認した。更にヌードマウス一側下肢虚血モデルにおいて、超音波前刺激を加えることで、CAC移植後にレーザードプラによる評価で血流が増加し、CD31陽性細胞で評価した毛細血管密度が増加した。動脈硬化患者由来のCACを用いた実験でも同様の効果がみられた。低強度パルス型超音波刺激は、非侵襲的にCACの血管新生機能を高めることが可能であり、既存の血管新生療法の効果を増強させる新たな手段となり得る可能性がある。
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Hidetoshi Chibana, Naoki Itaya, andTsutomu ImaizumiCardiovascular Research 95;
ページ: 448-459
Cardiovascular Research
巻: 95 ページ: 448-459