研究概要 |
本研究では、慢性炎症性肺疾患におけるCCL18の役割について着目し、その機能的意義の解明の為に統計遺伝学的手法を用いて研究を進めた。健常者625名、喘息患者513名、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者267名、サルコイドーシス患者327名を対象に、CCL18遺伝子における-87T/C(rs2015086)と4964C/T(rs712043)の遺伝子型についてダイレクトシークエンス反応を行い、ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer (Applied Biosystem Foster City, CA, USA)を用いて決定した。rs712043ではDominant modelにおいて、性別・年齢・喫煙歴・アトピー素因とは独立して喘息発症に抑制的に働く可能性が示された(OR;0.79,95%CI;0.62-0.99)。またCOPD、サルコイドーシス患者におけるアレル頻度、対立遺伝子型の割合は、健常者と比べて有意な差を認めなかったが、rs2015086におけるDominant modelでは、COPD患者を前向きに5年間経過観察した後の1秒率の低下が有意に少なく(TT0.53L(0.24-0.78L),TC-CC0.46L(0.27-0.69),P=0.015)、SGRQスコアも有意に高値であった(TT29.8(0-86.7),TC-CC36.6(7.7-70.1),P=0.034)。CCL18遺伝子におけるrs712043は喘息発症と関連する可能性が推測され、rs2015086はCOPDにおける1秒率低下、QOLスコア(SGRQ)と関連する可能性が推測された。
|