研究概要 |
本研究は抗トリオースフォスフェートイソメラーゼ抗体(抗TPI抗体)の作用機序や臨床応用に向けての研究を行うことを目的としている。今回、主に臨床応用への展開に向けて以下の実験を行った。 1.中枢神経ループス(NPSLE)以外の自己免疫疾患に伴う中枢神経病変に対しても抗TPI抗体が指標となり得るかスクリーニング(ウエスタンブロッティンク法:WB法)。 2.NPSLE患者で経過中複数回血清保存が可能であった患者においてNPSLEを発症していた時の血清とNPSLEがみられない状態での血清中の抗TPI抗体を測定し、NPSLEの有無で抗TPI抗体が対応して陽性/陰性となるかについて検討した(WB法)。 結果としては、1.についてはMCTD髄膜炎1例、腸管ベーチェット病8例、神経ベーチェット病4例で抗TPI抗体の検索を行ったが、神経ベーチェット病1例のみで抗TPI抗体が陽性であった。症例が少なく評価が難しいが、NPSLE以外の自己免疫疾患で抗TPI抗体が陽性となることは少ないと考えられる。2.に関しては上記の条件を満たしていたSLE患者5例において、2/5例でNPSLE徴候みられるときに抗TPI抗体陽性となり(感度40%)、4/5例においてNPSLE徴候のないときに抗TPI抗体は陰性を示していた(特異度80%)。以前の研究でも抗TPI抗体の特異度の高さが指摘されている(Watanabe et.al, BBRC 2004)。しかし、対象症例も少ないため今後さらなる症例の蓄積が必要である。 今回は大震災の影響もあり、実験室、機器の損壊などで思うように研究ができなかった。また、平成24年度より海外留学に行くこととなり、平成24年度の研究費は廃止させていただくこととなった。帰国後、さらなる抗TPI抗体の研究が行えるように、とくに作用機序の解明等にも解析が進められるように実験を進めていきたいと考えている。
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