研究課題
若手研究(B)
アクアポリン 5(AQP5)は、様々な癌種に発現し腫瘍進展などに関与していることが報告されているが、食道扁平上皮癌(ESCC)におけるその発現と役割についての報告はない。ESCC 細胞株に対し、AQP5 siRNA を用いてノックダウンを行ったところ、G1 期での細胞周期の停止、細胞増殖の抑制、細胞死の誘導が認められた。さらに AQP5 ノックダウンによる種々の mRNA 発現レベルの変化をマイクロアレイにて解析したところ、mRNA 発現レベルが 2 倍以上に上昇/低下した遺伝子はそれぞれ 1472/660 種であった。これらを Ingenuity Pathway Analysis にて解析したところ、Cellular growth and proliferation が AQP5 ノックダウンに関連したトップネットワークの一つとして抽出された。根治切除術を施行した ESCC68例の組織標本に対し免疫染色を行い、その染色強度と範囲から AQP5 高発現群と低発現群に 2群化したところ、AQP5 高発現群/低発現群はそれぞれ 41/27 例であり、前者において有意に腫瘍径が大きく、分化型が多かった。AQP5 高発現群/低発現群の 3 年無再発生存率は前者で有意に予後不良であった。以上より、ESCC 細胞株において、AQP5 は細胞周期、細胞増殖や細胞死に関与する可能性が示唆された。また、ESCC 組織での AQP5 発現レベルは腫瘍径や組織型と関連性を持ち、高発現群は予後不良となる傾向があることを解明した。
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