研究概要 |
我々は生後1日目のマウスの蝸牛細胞こヤマナカ4ファクターと呼ばれるOct3/4,Sox2,Klf4,c-Mycの4因子を導入することによりiPS細胞の樹立を施行した。それらの4因子を導入してから3週間後、多くのコロニーが形成されているのが確認できた。またこれらのコロニーは胚性幹細胞の形態に類似していた。次いて我々はそれらの細胞が初期化されているかどうか、多能性マーカー(pluripotent markers)を用いて調べたところそれらの因子の発現を確認することが出来た。 この結果は内耳蝸牛細胞が初期化されたこと、ヤマナカ4ファクターは蝸牛細胞をリプログラムさせる機能を有していることなどを示唆している。さらにそれらの初期化された細胞は特定の因子を導入することによりin vitroにおいて3胚葉に分化誘導させることが出来た。また外胚葉に分化した細胞をヌードマウスに移植したところテラトーマの形成をみることが出来た。 これらの実験結果をもとに、我々はアダルトマウスの蝸牛細胞を用いてそれらの細胞が初期化(iPS細胞作製)されるかどうかを検討した。生後1日目のマウス蝸牛細胞同様、ヤマナカ4ファクターを生後60目目のマウスの蝸牛細胞に導入しiPS細胞が樹立されるかどうかを検討した。4ファクターを導入してから3週間後に解析を行なったが、初期化された細胞(コロニー形成)を観察することが出来なかった。現在我々はさらなる因子の導入、ヤマナカファクターをインフェクションしてからの培養期間を延長する等、アダルトマウスの蝸牛細胞の初期化における最適な条件を検討中である。
|