研究概要 |
これまでに我々は,いくつかの癌腫においてCXCL14/BRAKが抗腫瘍作用を示すこと,また癌腫においてBRAKの分泌が抑制されていることを報告してきた。一方,RhoAとROCKは分泌過程の重要な制御因子であり,RhoA/ROCK経路の活性化は腫瘍の進展や転移を促進することが報告されている。そこで,我々は線維肉腫細胞におけるROCK阻害剤FasudilのBRAK分泌および抗腫瘍作用について検討した。我々は、TG-BRAKマウスにMC57細胞を移植し、分泌されたBRAKの抗腫瘍作用について検討した。さらに、我々はBRAKもしくはMOCKベクターを用いてMC57-BRAK(orMC57-MOCK)安定発現細胞を樹立した。MC57-BRAK細胞においてFasudil処理により有意に,かつ濃度依存的にBRAKの分泌が上昇した。Fasudilの腫瘍増殖への影響を検討するためにMC57-MOCK,MC57-BRAK細胞はWTマウスに移植された。Fasudil処理により,MC57-BRAK細胞移植群でのみ腫瘍増殖が阻害された。これらの結果から,FasudilがBRAKの分泌促進を介して線維肉腫の増殖を抑制したことを示しており,Fasudil療法の臨床領域における有用性を示唆している。
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