研究概要 |
明治 6(1873)年初版の翻訳解剖・生理・衛生学書『初学人身窮理』の一部にある<看病人ノ心得ベキ事>は、1854 年版 Calvin Cutter "First Book on Anatomy, Physiology and Hygiene"の 'Directions for Nurses'として掲載されていた。翻訳書は原著に忠実かつわかりやすい表現で翻訳され、女性の心得としての看護を提示していた。明治初期に出版された他の翻訳看護書と比較すると、男性が担うものとされていた看病人を、女性に適した仕事としていた点に大きな相違があった。しかし、どの書も実践的な内容であり、看護に必要な知識を普及させることで、日本の医療全体の質の向上を図り、国民生活の利益に結び付けたいという当時の有識者たちの意図がうかがえた。
|