研究課題
研究活動スタート支援
文化財資料の材質計測と劣化機構の解明は歴史・考古学においては不可避の課題であり、このため、貴重な資料のいろいろな物性値を迅速・簡便・正確に計測できる手法の開発が望まれている。エネルギーレベルが可視光より低い電磁波の一種である近赤外光の吸収・発光現象に着目した近赤外分光法の利用は、この目的にもっとも適う手法の一つである。本研究では、 長野県遠山郷で発掘された木曽ヒノキ埋没木(3個体)を試料とした。これら試料の年代を年輪年代法によって決定した(AD200-1900)。これらから5mm(放射方向)×10mm(接線方向)×100mm(繊維方向)の試料を連続的に130検体切り出し、各種測定に供した。試料をデシケータ(五酸化二リン)内に1カ月静置して全乾状態とし、全乾密度、近赤外反射スペクトルおよび曲げ弾性率(MOE)を測定した。最後にX線回折測定を行い、結晶化度および結晶幅を求めた。近赤外スペクトルの観察から、試料の劣化の程度および白色腐朽菌の存在を定量的・定性的に評価できることが示された。また、気乾埋没木の近赤外スペクトルから、PLS回帰分析を用いて、試料の各種物性値を予測したところ、十分な決定係数および予測標準誤差で予測が可能なことが示された。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
WOOD SCIENCE AND TECHNOLOGY
巻: 46 号: 1-3 ページ: 143-155
10.1007/s00226-010-0379-6