研究概要 |
自閉症の発症には,遺伝素因が強く影響することが知られているものの,染色体異常や遺伝子変異の判明する例は,自閉症児全体のせいぜい10-15%程度に過ぎず,大部分の症例では原因不明である.申請者は,自閉症固有の病態を理解し,新たな原因遺伝子検索や有効な治療法を開発する上で効率的な手段を確立するために,自閉症関連タンパク質問相互作用ネットワークを構築した(Sakai, Sci TM, 2011).本研究では,日本人における自閉症の遺伝的背景をゲノムワイド・マイクロアレイCGH解析によって明らかにし,インタラクトームとの関連性からその機能的な意義を解明する.自閉症の多様な遺伝的要因と生物学的な発症メカニズムとの関連を包括的に理解する試みはこれまでに例がなく,本研究計画は,効果的な治療戦略を創出する上で重要な基盤になることが期待される. 研究初年度である本年は,本計画内容に関して,九州大学遺伝子・ゲノム解析倫理委員会の承認を得た.当院小児科を受診した特徴的な臨床徴候を示す患児を対象に,末梢血から採取したDNAを用いてマイクロアレイCGH解析を行った.その結果,これまでに報告のない新たな遺伝子コピー数変異(cNv)を含む,4例の染色体構造異常(5q,22q,12p,および2p領域)を検出する-ことができた(論文投稿準備中).これらのCNVと臨床表現型との関連性,および自閉症の普遍的メカニズムについて,培養細胞とマウスモデルを用いた実験を計画・進行中である.
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