研究課題/領域番号 |
23820039
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
ヨーロッパ文学(英文学を除く)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
山本 潤 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50613098)
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研究期間 (年度) |
2011-08-24 – 2013-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2012年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2011年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 独文学 / 中世英雄叙事詩 / 記憶 / 口承文芸 |
研究概要 |
歴史的ディエトリーヒ叙事詩に分類される『ディエトリーヒの逃亡』の系譜的前史は、聖書の創世記との近似性が指摘されていると同時に当世批判のエクスクルスを含む、作品の主人公であるディエトリーヒ・フォン・ベルンに至るまでの彼の先祖七代について記したものであり、主に口承の領域において伝承されてきたディエトリーヒの伝説を書記的メディアへと移行させ、歴史的時間軸上に位置づける機能を持つ。それ故に、研究計画に掲げたドイツ英雄叙事詩に見られる歴史意識を考察する上でこの箇所の解釈は必要不可欠であった。 この観点から、平成23年度は系譜的前史の解釈に主眼を置いた研究を行った。そして『ディエトリーヒの逃亡』においては、口承文芸の伝統を引き継ぐ要素と書記性を背景とした宮廷叙事詩と共通する要素の混淆が、ディエトリーヒを主人公とする物語と、作品の想定する受容者層の現実の政治的状況を重ねあわせ、口頭伝承されてきた集合的記憶にアクチュアリティを付与し、新たな意味を持たせて語りなおすという機能を持っていることを明らかとした。 この『ディエトリーヒの逃亡』の解釈を通し得られた認識を、平成24年度からの若手研究(B)採択課題『メディアの転換と記憶の変容-中世英雄叙事文学を対象に-』の基盤とするため、『ディエトリーヒの逃亡』の成立に大きな影響を与えたと考えられる『ニーベルンゲンの歌』および『哀歌』において再検証し、それを紀要論文および口頭発表としてまとめた。 それとともに、口承の領域において集合的記憶の伝承メディアと見なされている英雄伝承が書記的な平面へ導入された理由の一つとして、13世紀における口承から書記へのメディア的転換の結果として、口頭伝承の「真実性」に関する信頼性が低下した可能性を想定した。この見解を今後『ラヴェンナの戦い』および「英雄本散文」において引き続き検証する予定である。
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