研究概要 |
本研究課題では自発運動体を対象として,空間的な階層構造および階層間での相互作用を見出そうとしている.手法としては実験及び理論を併用した.以下にそれぞれに対して成果を記す. (1)マランゴニ効果による液滴運動系・ストークス方程式に摂動的に移流項の影響を取り込むことで,マランゴニ流のもたらす液滴運動の数理モデルを作成した.ここに液滴内部での化学反応や変形等を取り込むことで内部自由度と並進運動の相互作用を取り入れたモデルを現在作成中である.・樟脳粒子は水面上に浮かべると自発的に並進運動する.ここで粒子の形状のキラリティを破ると,樟脳粒子は自発的に回転を示す.ここでは回転運動する樟脳粒子を複数用い集団としての運動挙動を観察している. (2)会合体形成に伴う液滴運動系・界面活性剤の会合体の生成により運動する液滴系の機構を明らかにするため,薄いセル中で水相と油相を設置させた単純な幾何学的設定で界面運動を観察した.またこの時,X線マイクロビームによる小角X線散乱を用いることで,in situで会合体のnm-μmの構造を明らかにした・粘弾性液体の動的な濡れ挙動に関して,ひも状ミセル溶液を用いて研究を行った.結果,サンプルの粘弾性によっては動的な手法を用いても固体壁面を濡らすことのできない条件が存在することが明らかとなった. (3)理論モデルによる集団運動様相・基板上にタイニン(分子モーター)を吸着させ,微小管とATPを導入すると微小管が連続的にタイニン上を運動する.ここで微小管の密度を大きくすると,微小管が巨大な渦を生成することが見出された.この機構は軌跡曲率の短時間の相関がnematic相互作用を通した集団化により強化され生じることが数理モデルにより示唆された.
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