研究概要 |
近年の水道水源水質の変動により,従来のアルミニウム系凝集剤では水系感染症を引き起こす病原性ウイルスを効果的に処理することが困難な状況が生じてきている.そこで,本研究では,これまで明らかにされてこなかったウイルスの除去/不活化に有効なアルミニウム多量体の形態特定及びアルミニウム多量体によるウイルス不活化のメカニズムを解明することにより,新たなウイルス処理技術として,広範な原水水質に柔軟に対応し,消毒処理への負荷低減が可能な新規凝集剤を開発することを目的とした. 本年度は,アルミニウム組成の大きく異なる複数の凝集剤を作製し,それらのウイルス処理への有効性を調べた.凝集剤は,加熱撹拌下で塩化アルミニウム溶液にNaOHを添加し,室温下で安定させることにより作製した.凝集剤の作製段階において,塩基添加量,加熱温度,加熱時間を変化させることにより,市販のポリ塩化アルミニウム(PACI)に比べて,ポリマー状Al種あるいはコロイド状Al種の存在割合の大きな凝集剤の作製に成功した.これら凝集剤のウイルス処理への有効性を回分式凝集処理実験により調べたところ,ポリマー状Al種,コロイド状Al種のいずれの存在割合の大きな凝集剤を用いた場合であっても,市販のPACIを用いた場合に比べて高いウイルス処理性を示した.また,コロイド状Al種の存在割合の大きな凝集剤を用いた場合には,弱酸性,中性,弱アルカリ性のいずれのpH領域においても,610g以上の高い除去率が得られた.従って,コロイド状Al種がウイルスの処理性の向上に大きく影響し,コロイド状Al種の存在割合が大きい凝集剤を用いることにより,弱酸性,中性,弱アルカリ性のいずれのpH領域においてもウイルスを効果的に処理できることが示唆された
|