研究概要 |
本研究の主目的は,これまで正確に取り扱われていなかった風波と流れの相互作用,およびサブメソスケール力学を考慮した新世代の海洋モデリングの枠組みを構築し,Eulerian/Lagrangian物質分散実験とその評価を通じて,沿岸海洋アセスメント技術の高度化に資することである.初年度は申請時の計画以上の様々な成果を出すことに成功した.すなわち,(1)黒潮続流域,(2)瀬戸内海全域,(3)米国南カリフォルニア湾,(4)東北・北関東沿岸域,(5)米国Duck海岸を研究対象として,JCOPE2等の全球/海盆規模データからの複数段階のネスティングを用いたダウンスケーリング実験を行い,モデルの妥当性の検証と,各種物理現象や物質の海洋分散に関する基本的な解析を行った.具体的には,(1)では高解像度化に伴うサブメソスケール力学と黒潮続流フロント構造の関係,(2)では黒潮流路変動が瀬戸内海の水塊構造および質量交換に及ぼす影響,(3)では波-流れ相互作用のうち,Stokes-Corilois効果およびvortex forceが陸棚循環に及ぼす影響,(4)では福島第1原発を放出源とした放射性セシウム137の海洋分散過程,(5)では波-流れ相互作用のうち,砕波による運動量輸送と波浪変形の双方向的作用に関する検討を行った.(1)~(4)では最先端の海洋モデリング技術を応用することにより,従来困難であった外洋影響を精緻に考慮しつつ,沿岸域で重要となる詳細な地形効果,河川からの浮力の混入などを正確に取り込むことを可能とした.また,(3),(5)では代表者らによる新しい3次元波-流れ相互作用理論とそのモデル化に関する最新の知見を取り込むことで初めて再現・解析が可能となったテーマである,
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