研究概要 |
本研究の主目的は,腸管粘膜内のクリプト構造の再生機序を解明し,組織構造を維持した特殊な培養系を確立することである. マウス小腸から小腸絨毛と小腸クリプトを小腸腸管組織から剥離し,小腸クリプトが豊富なサンプルを集め,培養に用いた.小腸クリプトをマトリゲル中に混濁し,37℃でゲル化した後に,幹細胞選択培地で覆い,インキュベーターで培養する.小腸クリプトを,個々の細胞に分離精製することなくクリプトの培養が可能であった.培養に必至な因子(Noggin, R-spondin, wnt3A)を除去した培地で培養した結果,R-spondinが再生に必須の因子であることが明らかとなった. 中・大型の動物モデルの構築を目指して,イヌ,ブタの小腸粘膜を用いて病理学的な検討を行った.イヌ小腸には顆粒が豊富なPaneth細胞を認めず,ブタ小腸にはマウスと同様にPaneth細胞を含む小腸クリプトを認めた.ヒトに近似する動物モデルとしてブタ組織を用いることが可能であることが示唆された.今後の動物モデルの構築に期待される.
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