研究概要 |
本研究の目的は、白金製剤含有高分子ミセルの腫瘍血管透過性および腫瘍組織浸透性が、放射線照射により経時的にどのように変化するのかを明らかにし、化学放射線療法への応用に向けて、最も治療効果の高い併用スケジュールを考案することである。平成23年度に実施した実験は以下の通りである。 マウス(Balb/c nu/nu, メス, 7週)の大腿部に、A549-GFP(GFP発現ヒト肺癌細胞)もしくはBxPC3(ヒト膵臓癌細胞)を皮下移植し、腫瘍部以外を鉛板で遮蔽しながら、麻酔下でX線(200kV, 1.3Gy/min)10Gyを照射した。照射スケジュールは10Gy×1回もしくは2Gy×5回(1fr/day)とした。 照射してから1, 3, 5日後に、ダッハプラチンミセル20mg/kgを投与し、24時間後に腫瘍切片を作成して、放射光蛍光X線分析による元素マッピングを行った。その結果、癌胞巣を形成するBxPC3では、10Gy照射5日後には癌胞巣の縮小が観察され、照射しない場合と比べて、癌胞巣内の平均白金含有量が上昇した。間質と接する癌胞巣の表面積が大きくなった為と考えられる。分割照射した場合は、形状の変化・白金の集積共に影響が小さかった。一方、血管密度が高く、癌胞巣を形成しないA549-GFPでは、白金は腫瘍内に一様に分布しており、照射による集積の大きな向上は観察されなかった。 in vivo共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察では、同様の条件で、アルブミンの血管からの漏出を、エバンスブルー静脈注射後から2時間撮影した。10Gy照射5日後で、最も漏れ出しのスピードが速かったが、観察したマウスの匹数が各条件につき1匹であり、追試が必要である。 初年度の実験結果から、X線照射後の腫瘍は形態や微小環境が大きく変化し、それに伴い白金製剤含有高分子ミセルの集積が影響されることが示された。
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