研究概要 |
本研究は,我々がケモカイン受容体CCR7の細胞内領域に会合する分子として同定したCOMMD3の機能解析を通じて,新しい免疫細胞動態の制御機構を解明することを目的とする.特に生体内の免疫細胞動態を解析するに当たっては,2光子励起蛍光顕微鏡を用いた生体イメージング技術を最大限に活用する.COMMD3の各免疫細胞サブセットにおける発現を定量PCRを用いて解析した結果,COMMD3の発現はT細胞,B細胞および樹状細胞を含めた免疫細胞サブセットに広く発現していることが確認された.CCR7の反応性制御におけるCOMMD3の機能について検討するため,COMMD3の発現をmRNAレベルで90%以上抑制するsmallhairpin RNA(shRNA)を作成し,マウスリンパ腫細胞株に導入した結果,細胞株のCCR7のリガンドに対する走化性が減弱することが確認された.このことは,COMMD3がCCR7のシグナル伝達の正の制御因子であることを示している.また,生理的条件でのCOMMD3の機能を明らかにするため,COMMD3遺伝子欠損マウスの作成に着手し,既にキメラマウスが得られている.さらに,生体イメージングに必要な2光子励起蛍光顕微鏡の整備に取り組み,生体内のリンパ組織を生きたまま観察する準備を整えた. 本研究をさらに推し進め,COMMD3の機能の詳細が明らかになれば,COMMD3を標的とした薬剤によって,免疫細胞のケモカインに対する反応性をCCR7あるいは他のケモカイン受容体に偏向させることで,生体内での免疫細胞の動態を人為的に操作することが可能となる.このような薬剤の開発は,自己免疫・慢性炎症性疾患および臓器移植後の拒絶反応・移植片対宿主病の新たな治療につながる可能性がある.
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