研究概要 |
本研究は,中学校技術・家庭科技術分野の「エネルギー変換に関する技術」において,思考力・判断力・表現力を高める題材の開発を試み,抽出実験と教育実践から,開発した題材の教育効果を検証したものである。中学校の技術分野では,思考力・判断力・表現力は「工夫し創造する能力」に位置づけられている。製作題材を用いた学習では主に「設計」の場面で育成させることが求められており,電気機器を製作題材とした場合,回路設計の要素が望まれる。しかし,実際に行われている中学校の教育実践を調べると,回路を設計させ,オリジナルな製品を製作させている実践例は極めて少ないことが明らかとなった。それは,回路設計が中学生にとって難易度が高いため,指導が困難であることが原因の一つと考えられる。そこで,本研究では,学習者が使用目的や使用条件に即した回路を容易に設計でき,オリジナルな製品を製作することができる題材の開発を試みた。本研究の成果を以下にまとめる。 (1)できるだけ少ない部品数で容易に回路設計が行え,使用目的や使用条件に即した製品が製作できる題材として「オリジナルLEDランプ」を開発した。 (2)回路図などの技術分野特有の言語活動を効果的に展開できる専用の設計ワークシートを考案し,指導計画から評価方法までを示したカリキュラムを構築した。 (3)中学生(30名)を抽出し,あらかじめ回路設計された製作題材とオリジナルLEDランプの両方を学習させ,質問紙法により「工夫し創造する能力」の獲得感を調べた。その結果,オリジナルランプにおいて有意に高い獲得感が確認できた。 (4)開発した製作題材を用いて,中学生(149名)を対象に教育実践を行い,得られた設計用ワークシートの記述内容を学習指導要領解説に示された設計の視点に基づき分析した。その結果,回路設計を通じ,多くの生徒が工夫し創造するプロセスを体験していることが確認できた。
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