研究目的:府県レベルでの森林環境税というフォーマルな制度と、その実効性を担う市民の地域への愛着や社会規範、社会ネットワークなどのインフォーマルな制度・しくみの機能・強度を分析対象とし、公的なフォーマルな制度と地域性の高いインフォーマルな制度の相互関係による影響が、(1)どのように個人に内在化され、個人の環境配慮行動(森林ボランティア活動への参加等)に係る意思決定プロセスを変容させるか、また、(2)個人がどのような評価基準でフォーマルな制度の受容性を規定するかを明らかにする。 研究方法:市民アンケートを実施し、属性別に多様な要素の因果関係を明らかにできる共分散構造分析(構造方程式モデル)の同時分析により、「(1)環境配慮行動に係る意思決定プロセス」、「(2)政策の受容性に係る評価プロセス」を定量的に明らかにする。 研究成果:「(1)環境配慮行動に係る意思決定プロセス」は、森林環境税が"関心→動機→行動"という意思決定プロセスに影響を与えるとともに、"動機→行動"の関係性の違いや森林環境税の影響力の違いが、県別の森林ボランティア活動への参加水準の差異につながることを示した。「(2)政策の受容性に係る評価プロセス」は、森林環境税導入の効果と行政への信頼が森林環境税受容に係る判断要因になること、行政への信頼要因よりも森林環境税の効果要因のほうが影響力が大きいこと、地域の森林に関する低関心群および低行動群は、高関心群および高行動群に比べて、相対的に行政への信頼要因の影響が大きくなることを示した。また、地域への愛着水準の高低群別の分析では、高愛着群は低愛着群に比べて、身近な人の森林環境税制度への評価影響が相対的に大きく、低愛着群は高愛着群に比べて森林環境税制度のしくみ評価の影響が相対的に大きくなることなどを定量的に示した。
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