シックハウス症候群や化学物質過敏症など微量な揮発性有機化合物(VOCs)が人の健康に影響を与えることが問題となっている。小学校、中学校などの、学校施設において、子供がアレルギー症状にかかることが問題となっている。これをシックスクール症候群とよんでいる。この原因はシックハウスと同様に、建物の建材・塗料あるいは備品等に由来するVOCsが原因と考えられる。そこで、文部科学省は、2002年に、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンおよびパラジクロロベンゼンについて、学校施設における濃度指針値を設けた。また、2004年にエチルベンゼンとスチレンが追加された。我々の研究グループでは、簡便かつ迅速に空気環境中のVOCsの抽出および脱着が可能な新規抽出デバイスを開発している。本研究では、メタクリル酸とエチレングリコールジメタクリレートの共重合体粒子を充填した針型試料前処理デバイスを用いて、教育施設における微量なVOCsの測定を行った。現在使用されている普通教室では、測定を行ったすべての教室においてVOCsの濃度は十分に低いことが分かった。一方、一部の特殊教室では、普通教室よりも高濃度のVOCsが含まれる場合があることも確認できた。さらに、部屋の内部の塗装、建物の改築・新築等を行うと、学校衛生基準や室内環境基準で規制されていないVOCsが比較的高濃度で検出される場合があることも確認できた。子供達は、大人よりも化学物質に対して過敏である上に、学校教室では子供達がその多くの時間を過ごすため、より詳細な検討が必要である。今後も教育施設におけるVOCsの測定を継続的に実施し、シックスクールの評価を継続して研究して行きたいと考えている。
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