【研究目的】 金属基板上へのタングステンカーバイドの薄膜の形成及び硬質炭化物粉末の合成を目的として実験を行なった。 【研究方法及び成果】 金属基板上に炭素蒸着装置を用いて炭素を設置しそこへタングステンの溶射を行なった。形成された薄膜を分析した結果、炭化物の生成は確認されなかった。炭化物の合成とコーティングを一つのプロセスで行うには更に高いエネルギーが必要であると考える。 硬質粉末の合成を目的として、炭素を含む溶液中で金属細線に大電流を印加する実験を行なった。この合成方法については先行論文があり、それによるとベンゼンやトルエンなど炭素の割合が高い炭化水素を用いなければ効率的に炭化物の合成が出来ないとされていた。本研究では、先行論文よりも高いエネルギーを金属細線に印加し、人体に無害な流動パラフィンを用いることにした。流動パラフィン中にタングステン細線を設置し大電流を印加すると、タングステンはプラズマ化し、周囲にある炭素と反応する仕組みである。回収された粉末粒子に対してX線回折を行なったところ、小さい未反応なタングステンのピークも確認されたものの、大部分はタングステンカーバイド(WC_<1-x>)であることが分かった。条件変化によって、その炭素の割合も変化することが分かった。SEM観察では、その粉末の大きさは数十nm~数百nmの粒径にばらつきがある粉末であることが分かった。このWC_<1-x>は、プラズマや衝撃処理等でしか合成できない準安定相で、硬質で超伝導物質である。TEM観察では、未反応のタングステン粒子の周囲を銅が覆うコア・シェル構造の微粒子を確認した。
|