研究概要 |
日本の社会インフラは高度経済成長期を中心に建設されており,今後これらの劣化が大きな社会リスクとなると予想される。これからの持続可能な社会基盤の構築にはコンクリート構造物の長寿命化が不可欠であり,そのためには劣化診断・維持管理技術の向上が必要である。本研究は,構造物損傷の影響が小さく採取跡の補修が容易な小径コアをかぶりコンクリートの劣化診断に用いることを目的として,凍害劣化に伴い発生する微細ひび割れに着目し,これを簡易に観察して耐凍害性を評価する手法を開発するとともに新たな凍害深さ評価方法を提案しようと試みたものである。 実験方法は凍結融解試験(JIS A 1148A法)により凍害劣化した角柱供試体から直径25mm,高さ50mmの小径コアを採取し,コア側面の幅10mm,高さ50mmを研磨した。そして,リニアトラバース法(ASTM C457-71)を参考にひび割れ密度(=ひび割れ総本数(本)/測線長(mm))を算出して相対動弾性係数との対応関係を求めた。さらに,角柱供試体の表面から深さ10mmごとにひび割れ密度を算出し,ひび割れ密度の深さ方向分布を求めた。主な研究結果は以下の通りである。 (1)ひび割れ密度は相対動弾性係数が低下するほど増加して両者に相関関係が認められるため,ひび割れ密度はコンクリートの耐凍害性を評価できると考えられる。 (2)凍害劣化したコンクリートのひび割れ密度は表層部分ほど大きく,内部に進むにつれて一定の値に漸近する傾向にあり,角柱供試体の劣化程度によって深さ方向のひび割れ密度が異なることを確認した。したがって,ひび割れ密度の深さ方向分布は凍害深さの指標となる可能性があると考えられる。
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