アオメエソ属(Chlorophthalmus)魚類のマルアオメエソ(C.borealis、通称メヒカリ)の発光の研究は、肛門周辺の発光器に発光バクテリアを共生させていること以外殆ど行われていない。本研究では、発光器がありながら発光が確認されていないマルアオメエソの発光を、ふくしま海洋科学館で飼育されている個体を用いて高感度CCDにより微弱な発光点として世界で初めて撮影した。また、摂餌等で運動が活発になる午前0時頃にやや強い発光を確認した。 平成23年度学術研究調査船淡青丸の研究航海で、高速仔稚魚定量採集ネット(MOHTネット)及びビームトロールを用いた黒潮流域の採集調査を実施した。マルアオメエソの着底期稚魚と親魚を採集することはできなかったが、船上での高感度CCDを用いた暗視野での撮影方法を確立した。 静岡県沼津市戸田沖で採集されたマルアオメエソ成魚の発光器切片標本をミクロトームで作製し、顕微鏡で観察・記録写真の撮影を行った。その結果、この魚の原始的な発光器には発光バクテリアをほとんど確認することはできなかった。進化の過程で微弱な発光に意義があるとすれば、成熟の度合いと発光バクテリア量に何らかの相関関係がある可能性が示唆された。 さらに、東京大学大気海洋研究所(猿渡敏郎)、ふくしま海洋科学館(山内信弥)と協力し学際的な共同研究を行い、マルアオメエソに対する社会認識を向上させるために、インターネット上の日本魚類学会ホームページでの研究紹介を介して、研究成果を発信した。 本研究は、従来の固定標本を用いた発光器構造研究だけではわからないマルアオメエソの発光を伴う行動生態を、飼育下での高感度CCDを用いた暗視野での撮影記録により解明に一歩近づいたことに意義がある。 平成22・23年に日本魚類学会例会で口頭発表した成果は、岩手県立博物館平成25年度企画展においてパネル・標本展示のみならず動画による情報公開することが決定している。
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