研究概要 |
植物組織等の生体試料をSEM観察する際は、試料が絶縁体且つ含水であるため、通常は前処理として固定、脱水、金属コーティングを行わなければならない。しかし脱水操作は手間と時間がかかる。室温で導電性を持ち蒸気圧も極めて低い液体であるイオン液体は、真空中でも液体状態を維持するので、試料中に含まれる水分をイオン液体と置き換えることが出来れば、脱水による組織の変形を防ぐことが出来る可能性がある。本研究では、イオン液体を用いた生体試料の簡便なSEM観察技術の確立を目指した。 本研究では、タマネギの鱗茎をグルタルアルデヒドで固定したものを試料とし、イオン液体溶液に浸漬させたものを卓上走査型電子顕微鏡で観察し、通常のエタノールによる脱水処理及びt-ブチルアルコールによる真空乾燥を行ったものと比較した。イオン液体は親水性の酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウムを用いた。 試料を浸漬させるイオン液体溶液については、下記の条件の検討を行った。 1、イオン液体の濃度10%,20%,30%,40%の各溶液について比較した。 2、イオン液体溶液中の有機溶媒(エタノール)の有無の影響 溶媒が、水のみのものと、水:エタノール=1:1のものとを比較した。 3、試料の浸漬時間浸漬時間を30分、60分、120分として、比較した。 上記の実験の結果、浸漬時間については差が見られなかった。溶媒にエタノールを含むほうが、試料の変形は大きくなるようである。イオン液体の濃度が高いほうが試料表面の凹凸が保持される傾向が見られた。いずれの条件でも通常の脱水乾燥処理と比較して、試料が大きく変形しており、実用できるものでは無かった。
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